📚 『読んでいない本について堂々と語る方法』の感想

読んでいない本について堂々と語る方法

興味深さ : ★★★☆ 興味深い

おすすめ度 : ★★★☆ お勧めできる

この感想文は私が運用中のサービスYOMINAで書きました。 読書時のメモなどはこちら

概要

精神分析医でもあるピエール・バイヤールによる読書論。

本書では「読んでいない本について堂々と語る」ための心構えを導くための前段階として、そもそも「本を読む」ことはどういうことなのか、「本について語る」ことはどういうことなのか、という 2 点を深く考察している。

本との付き合い方に一つの指針を与えてくれる本。

読書メモのまとめ

共有図書館

  • 書物はそれ単独で語られるのではなく、他の書物との相対的な位置付けで語られる
  • ある文化の方向性を決定づけている一連の重要書の全体(p.28)を共有図書館と呼ぶ
  • 人々がある書物について語るには、共有図書館におけるその書物の位置付けを知っていれば良い

遮蔽幕(スクリーン)としての書物内なる書物

  • 人々がある書物について話題にするとき、それは物質的な本ではなく、遮蔽幕としての書物についてである
  • 遮蔽幕(スクリーン)としての書物は、その本について自分が知っていると思っていることの集合
  • 人々が本を読むということは、物質としての書物のテクストと読者の間を内なる書物が仲介し、読解の仕方を決定づける
  • 内なる書物は読者それぞれによって異なるので、書物の主観的な解釈の結果としての遮蔽幕(スクリーン)としての書物が生じる

ヴァーチャル図書館幻影としての書物

  • 書物について語るとき、ヴァーチャル図書館が生まれる
  • ヴァーチャル図書館では、複数の遮蔽幕(スクリーン)としての書物が出会った結果、幻影としての書物が生まれ、これについて語られる

批評について

  • 批評とは、創作物について語るのではなく、創作物を介して自分自身を語ることである

印象的な言葉

われわれはたんに〈内なる図書館〉を内部に宿しているだけではないからである。われわれ自身がそこに蓄積されてきた書物の総体なのである。 (p.94)

つまり、書物から抽出され、手直しされた抜粋によって、われわれの人格に欠けている要素を補い、われわれが抱えている裂け目を塞ぐ、そうした役割を果すのである。(p.154)

書物は固定したテクストではなく、変わりやすい対象 (p.174)

本は読書のたびに再創造される (p.214)

感想

本を読むという行為について、これほど具体的に語られた文書は見たことがなかったので、一人の読書者として知見が広がったという感じがします。

読書が好きな理由の言語化が難しかったのが、この本を通してある程度、自分の中で腹落ちした感覚があります。

『読んでいない本について堂々と語る方法』というタイトルではありますが、本を読むことが好きな人こそ触れるべき著作だと思います。